竹工芸家 美追究の生涯

読売新聞オンライン
2019/03/24


◇野洲で遺作11点や映像

 2017年秋の叙勲で旭日双光章を受章し、直後に85歳で急逝した野洲市の竹工芸作家杉田静山じょうざんさんの没後初の作品展が、市歴史民俗博物館(銅鐸どうたく博物館)で開催されている。子ども時代に聴力を失い、生活用具の竹細工作りから始め、芸術作品の創作へと高めた杉田さん。遺作11点とともに、制作の様子を収録した映像などで、在りし日の杉田さんを伝えている。

(名和川徹)

展示作品の花籠「波」=野洲市歴史民俗博物館提供


◇2017年旭日双光章・杉田静山さん

 大阪生まれで、1944年、12歳で病気のため聴力を失った。翌45年、戦災で両親の古里だった野洲に移住。近所の人が竹籠を編む様子に興味を持ち、見よう見まねで作り始めた。


 県立聾話ろうわ学校で教員を務め、聴覚障害者の権利向上にも尽力しながら創作を続けた。日展、日本伝統工芸展などでの入選を重ね、97年に県無形文化財保持者に。海外でも竹工芸の魅力を紹介した。2017年11月3日の叙勲で旭日双光章を受章したが、同月12日に亡くなった。


 今回の作品展「竹工芸作家 杉田静山の世界 ―竹に魅せられて―」では、2015年の寄贈作、花籠「波」のほか、前衛的な初期の作から伝統的な美と、繊細な独自の技を追究した晩年の作までの10点(遺族所蔵)を紹介する。また、工房で制作中の様子などを収録した06年の映像も上映する。


 展示を担当する斉藤慶一学芸員(34)は生前の印象について、「作品に向かう杉田さんは、とても気品の高い、芯のある方だった」と語る。最晩年は体調が優れず制作は困難だったが、「日本を代表する竹工芸作家として、美しさを求める意欲を最後まで持ち続けていた」と振り返る。


5月26日まで。月曜休館。

祝日は開館し、翌日休み。

入館料が必要。

問い合わせは、市歴史民俗博物館(077・587・4410)。





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