僕は目で音を聴く(41)人工内耳に消極的な人も

西日本新聞
2019年03月21日


 今回は人工内耳がテーマです。人工内耳は、手術によって側頭部に装置を埋め込み、耳に装着する体外器が音を電気刺激に変換して装置に送り、神経に伝えることで音が聞こえるようにする仕組みです。 


僕は目で音を聴く(41)人工内耳に消極的な人も(平本龍之介)



  私の友人は2000年に手術を受け、それまで聞き取れなかった高い音が聞こえるようになり、一対一の会話ならほぼ支障なくできるようになりました。


 手術費は計約200万円に上り、国の助成制度などをフルに活用して12万円程度で済んだとのこと。最近は防水のものもあるそうですが、体外器は汗や水に弱いのが難点。もし壊れると買い替え負担が大きく「保険の加入は必須」と強調していました。


 人によっては人工内耳にしても補聴器を着けないと聞こえにくいまま、ということもあるようです。側頭部の装置は、骨の表面を薄く削って埋め込むため、頭への衝撃にも注意が必要です。まだ発展途上の技術ということでしょう。


 実は、私は人工内耳の手術を受けることは考えたことがありません。聞こえないことも含めて自分自身であり、聞こえない世界を受け入れて生きていこうと常々考えてきたからです。同じく、聞こえないことにいわば「誇り」を持ち、人工内耳に良い印象がない、と言い切るろう者も数多くいます。


 生まれた赤ちゃんが聞こえないと分かると、強く人工内耳を勧める医者がいると聞いたことがあります。ただでさえショックを受け、聴覚障害の知識がなく、人工内耳の利点や難点も理解していない親に対して、真っ先に手術を持ちかける-。正直、違和感しかありません。


 重度の難聴者の聞こえを補う技術として、歓迎する方ももちろんいらっしゃるでしょう。ただ私のように「聞こえる世界への憧れ」がないろう者がいる、ということもぜひ理解してもらえたら、と思います。聞こえない人を「排除」することなく、聞こえる人と聞こえない人がともに支え合って生きていく、そんな世界になってほしいのです。


 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)



 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。





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