東京新聞(TOKYO Web)
2019年3月10日
東日本大震災の被災地の聴覚障害者に密着した
ドキュメンタリー映画「架け橋 きこえなかった3.11」(今村彩子監督)
のチャリティー上映会が、豊島区庁舎のとしまセンタースクエアで開催された。
チャリティー上映会でトークショーを行う今村彩子監督(左)=豊島区で
今村監督は上演後のトークショーで、聴覚障害者ら
災害弱者への配慮にさらに力を入れる必要性を指摘した。
映画は、自身も耳が聞こえない今村監督が、地震発生十一日目に宮城県を訪れ、
二年四カ月かけて聴覚障害者が直面した困難や、心の復興を記録した。
上映会は七日、被災地を訪問、
支援している同区の防災ボランティア灯(あか)りの会が主催。
映画の中で今村監督は
「命がかかった情報に格差があってはならない」
と訴えている。
聴覚障害者は津波警報が聞こえず、避難できなかった。
命綱の携帯電話のメールも基地局の倒壊で使えなかった。
避難所では、食料配布の案内が聞こえず、常に周囲の人の
動きに注意を払い続けた結果、ストレスをため込んだ。
そんな困難の重なる状況が明かされている。
一方で、地域の絆や全国からの支援など温かいシーンもあり、
個性的な障害者のユーモラスな言動には笑いも起きた。
トークショーでは、今村監督は
「テレビを見ても新聞を読んでも、東北にも聞こえない人がいることが出てこない。私にできることは何だろうと思い、被災地に行った」
と振り返った。
練馬区の女性(77)は
「知らないことが多かった。映画に出てくるみなさんが元気になられていて感動して涙が出ました」。
聴覚障害の娘を持つ足立区の女性(50)は
「地震に限らず、いつも娘の心配をしている。今日は現実を見せられた」
と首都大地震への警戒を強めた様子。
今村監督は
「熊本地震では避難所の受け付けに『手話通訳、筆談が必要な方は申し出てください』と書かれていた。テレビの字幕も増えた」
と変化を感じつつも、
「手話通訳はまだ足りない」
と話していた。
(宮崎美紀子)
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