目が見えない、耳が聞こえない。どうやって「笑い」を届ける? 吉本芸人が考えた

HUFFPOST JAPAN  2019年01月06日


次長課長の河本準一さんや

麒麟の田村裕さんらが

新しい笑いをつくっていた。


 目が見えない、耳が聞こえない、日本語が使えない。そんな状況でプロの芸人は

「笑い」をとれるのか。

  平成最後の年の暮れ、吉本興業の芸人が、あえて普段とは違う状況で大喜利などに挑戦した。


視覚障がいや聴覚障がいなどの「障がい」をテーマに

コミュニケーションの難しさ

を考えるためのイベントだ。 

当日の様子をレポートする。

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「聞こえない」「見えない」人を、どうやって笑わせる?

 イベントに参加したのは、お笑い芸人・次長課長の河本準一さんや麒麟の田村裕さん、

吉本興業が主導するアジア版「あなたの街に住みますプロジェクト」のメンバーで、

アジア各国でお笑いに挑戦している芸人ら総勢20人以上。 


一般参加者は老若男女幅広く、障がいを持つ人もいた。 

 イベントでは、少人数のグループに分かれ、

「みえない」「きこえない」「はなせない」状態で

コミュニケーションを取るゲーム形式のワークショップを実施。


 「みえない」と書かれたカードを引くとマスクで目を塞ぎ、

「きこえない」カードでは耳にイヤホンをつける。そして、

「はなせない」というカードを引くと、喋ることができなくなる。 


 このような状態で自己紹介やしりとり、大喜利などのお題に沿って

チームのメンバーと意思伝達を図る、という内容だ。

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 お笑い芸人にとって、「喋り」は欠かせない存在といっても過言ではない。 

その商売道具を封印した状態で、人を笑わせることはできるのか? 

 20人以上の芸人たちが、ジェスチャーを使ったり、時には伝えたい相手と

直接触れ合ったりしながら、「伝えたいことを伝える」ために試行錯誤していた。 


 ワークショップの最後には、視界と耳が塞がれ、話すこともできない状態の芸人が、

「こんなテーマパークは嫌だ」というお題の大喜利を伝えるゲームに挑戦した。

伝える相手も、まったく同じ状態。 


 河本さんは、パートナーと二人羽織りのようになり、身振り手振りで

家の形をかたどるジェスチャーをとり、

「家がテーマパーク」という回答をパートナーに伝えた。


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視界と耳が塞がれ、話すことができない状態で、芸人が「こんなテーマパークは嫌だ」という大喜利の答えを相手に伝える。

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「はなせない」カードを引くと、喋ることができない。会話をするために工夫が必要だ。


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次長課長の河本さんは手話を勉強中

 吉本興業は、地方活性化や海外展開を目的とした新規事業のほか、

「SDGs(持続可能な開発目標)」など社会貢献に繋がる取り組みにも積極的だ。 


 今回のイベントは、障がいの有無に関わらず、誰もが「会話」をできる未来を目指す

「未来言語」と吉本興業のコラボで開催された。 


 参加者の一人、次長課長の河本さんは、手話を勉強中だという。

ワークショップ後に開かれたトークセッションでは、

「言葉では自分の発言を撤回できるが、ジェスチャーでは一度伝えたことを『訂正』しづらい」

と、障壁がある中で意思疎通を図る難しさを語っていた。

 「相手のことを思って伝えることが大事で、雑なコミュニケーションをとると

相手が不快になることもある」と振り返った。


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日本語が通じない海外では、「リズムネタ」がウケる?

 イベントに参加した「住みます芸人」のメンバーは、普段は言語も日本のお笑い界の

常識も通じない海外で活動をしている。

 

「インドネシア芸人」のザ・スリーは、

「ボケがいつも怒られていることに疑問を持たれた」と話した。

 日本ではボケた芸人に対して、頭を叩く「つっこみ」で笑いをとることも多いが、

海外ではそれが「怒られている」とみられることもある。

 

そんな文化や価値観の違いを感じたエピソードを明かした。 

 工夫の末に辿り着いたのが、リズムネタ。

ボケもツッコミもない「あるある話」をリズムに合わせて披露するネタを

YouTubeで公開したところ、再生回数が1600万回を超えるヒットを飛ばしたという。

 (一方で、ろうの人にとっては、リズムネタのおもしろさは理解しづらい、という当事者からの率直な意見もあった。)


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吉本


▼ザ・スリーが公開したリズムネタ「Tidak apa apa」


健常者と障がい者の垣根なくす 「芸人からも発信したい」

 今回のワークショップでは、初対面の参加者同士がお互いの体に触れ合いながら

コミュニケーションを取ることで、一気に距離感が縮まっていく様子が印象的だった。 


 最近では、視覚障がいを持つ漫談家の濱田祐太郎さんがピン芸人ナンバーワンを決める

「R-1グランプリ2018」で優勝したことも、記憶に新しい。

 NHKでは、障がい者がでるバラエティ番組「バリバラ」が評判だ。 


 バラエティ番組などに出演するお笑い芸人は、若い世代にとっても親しみやすい存在だ。

こうした取り組みから、障がい者と健常者の垣根をなくすための議論が

広がっていくかもしれない。 


 トークショーの最後に河本さんは、

「特に女性や若い世代の人が参加してくれたことが嬉しい。

芸人からも発信していきたい」と語った。

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イベントに参加した吉本芸人ら


イベント参加芸人: 

次長課長・河本準一、麒麟・田村裕 「住みますアジア芸人」アーキー、緑川まり、ダブルウィッシュ、KLきんじょー、ザ・スリー、黄金時代、タイガース、アキラ・コンチネンタル・フィーバー、そこらへん元気 「手話できます芸人」カエルサークル・ソイくん




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