毎日新聞 2018年11月27日
HIV感染予防
手話・字幕付きの動画で
ろう者で映画監督の今村彩子さん制作
聴覚障害のある人にエイズウイルス(HIV)の感染予防の
正しい情報を届けようと、ろう者で映画監督の今村彩子さん(39)=名古屋市=が、
手話・字幕付きの啓発動画を制作した。
感染した当事者の声も盛り込んでおり、12月1日の世界エイズデー
に合わせて無料公開する。
「誰にとっても身近な病気であることを知ってほしい」
と呼び掛けている。
手話通訳や字幕を付け、聴覚障害者にもわかりやすく伝えるHIV感染予防動画を制作した
今村彩子さん(左から3人目)
=東京都港区で2018年10月28日午後2時5分、蒔田備憲撮影
今村さんはこれまでも聴覚障害にかかわる作品を手がけてきた。
以前、聴覚障害者で性的少数者(LGBTなど)でもある人たちを取材して
DVDを制作した際、HIVに関する情報が聴覚障害者に行き届いていない現状を知った。
「予防と治療には正しい知識と情報が必要なのに、聴覚障害者は取り残されている」
と感じたことが、動画制作のきっかけになった。
今村さんによると、既存の啓発動画には字幕や手話通訳が付いていないことがほとんど。
手話を使う聴覚障害者の場合は、相談窓口で通訳者が必要になることが多く、
「誰にも知られたくない」という気持ちから窓口に足を運びづらい現状もあるという。
今回の動画は全編に手話と字幕が付き、専門医がHIVやエイズについて解説する。
性交渉など感染経路の注意点、HIV検査を受けるための方法なども紹介した。
案内役を務めるのは、難聴で長崎大病院耳鼻咽喉(いんこう)科の吉田翔医師(34)。
HIVを専門にしているわけではないが、聴覚障害者に身近に感じてもらうため出演した。
HIVに感染した、ろう者の男性の体験談も盛り込まれた。
実際に登場するのは難しかったため、「生きていられない。死んだ方がいい」と
絶望した気持ち、感染したことを知っても普通に接してくれる友達に出会い
「もうひとりぼっちじゃない」と感じたことなど率直な思いを、
別のろう者が手話で代弁した。
今村さんは「誰もが感染しうる、身近な病気であることを知ってほしい。
聴覚障害者だけでなく、聞こえる人や支援団体にも見てもらい、
聞こえない人が悩んでいるかもしれないと気付いてもらいたい」と話している。
動画公開予定のホームページは
(https://studioaya-movie.wixsite.com/11kimi/hivaidsyoboumovie)。
【蒔田備憲】
youtube
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