[デフサッカー全日本選手権]男子は東日本が4連覇

ゲキサカ  11/19


[デフサッカー全日本選手権]東日本が4連覇。

決勝ゴールを奪った日本代表・原口を成長させた意外な理由


[11.18 第15回全日本ろう者サッカー選手権大会決勝 東日本 3-1 九州 浦安市総合公園球技場]  

 歓喜の瞬間、涙をこらえるように右手で顔を覆った。1-1で迎えた後半5分、東日本の主将で

日本代表の右SB原口凌輔が左からのクロスにドンピシャで右足をあわせ、勝ち越しの2点目を奪う。


 手の親指と人差し指でVの字を作り、顔の半分を覆い隠す独特のゴールパフォーマンス。

イタリアの名門ユベントスに在籍するアルゼンチン代表FWパウロ・ディバラが

「自分に運をもたらしてくれる」と続けているゴールパフォーマンスを

まねて、原口も幸運に感謝した。  


 「リバラ選手のゴールパフォーマンスに、原口の『原』をかけて、お腹を触りました(笑)。

いいクロスがきたので、あとは押し込むだけでした」

優勝カップを掲げる原口凌輔(左)


 聞こえづらい世界でプレーする選手たちへの配慮と尊敬からか、

デフサッカーのピッチに響く音はボールを蹴る音が大半だ。


 選手同士やベンチやGKからの指示の大きな声も、必要な時以外はあまり聞かれない。

相手のファウルをやじる罵声もよほどのことがない限り飛ばない。


 だからこそ、東日本の勝利が見えた2点目が決まった瞬間の歓声は、

浦安市総合公園球戯場をを包み込むように、ひと際大きく響き渡った。

原口が見せた通称”ディバラマスク”


 原口は生まれつき、聴覚障がいがある。社会人1年目の今年、健常者の社会人チーム

に在籍しながら、デフサッカーのチームでもボールを蹴る。


 社会人チームでは、周りの選手は声を頼りに先のプレーを選択するが、原口は

それができないため、隣の選手に身振り手振りを交えてコミュニケーションをとっている。


  大会を視察したデフサッカー男子日本代表の植松隼人監督が明かす。

  

「5年前に代表候補に呼ばれたときから彼を知っていますが、編成上の理由で

代表から外れてしまったこともあり、苦労しているんです。

原口は以前、ボランチやCBもこなして自分の強みがはっきりしなかったんですが、今は

コミュニケーションが活発になってきて、リーダーシップがとれるようになってきた。

それは、手話を覚えたのが大きい。彼は高校までは普通学校にいて手話ができなかったんです。

手話は英語と同じで言語の一種ですから。

今、チームにどういう空気が流れているのか、それを察知して落ち着かせることが

できるのが原口の強みの一つです」  


 この試合でも3-1と東日本がリードした後半35分過ぎ、相手選手が東日本の選手を

激しく突き飛ばし、退場に発展した。


 空気が騒然としたとき、原口は自陣のゴール前付近から真っ先に主審と

相手選手のもとに駆け寄り、一触即発のムードを鎮静化させた。


 そのリーダーシップは国際舞台でも生きるはずだ。 

 「2021年のデフリンピックで優勝したいです」  

自らの努力で対話の手段を広げた原口は、夢も大きく広がる。


 (取材・文 林健太郎) 




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