西日本新聞 2018年11月15日
僕は目で音を聴く(27)
頭の中で「言葉のパズル」
今回は、私が相手とコミュニケーションを取っている方法を
詳しく、具体的に紹介します。
この連載でもたびたび登場する「読唇術」がおよそ5割。
相手の唇の動きを読んで、言葉を読み取るスキルです。
それから相手の声を聞き取るのが2割、
顔の表情で理解するのが3割ぐらいでしょうか。
自分自身の体調が優れないとき、また相手の声のイントネーションや
スピードによっても認識の程度は変わります。
補聴器を着けているので、ある程度、実際の声に近い音を拾うことができますが、
外すと認識力はかなり下がります。私の場合、男性に比べれば
声が高い女性の方が理解しやすいかな、という感じです。
顔の表情では、相手が笑っているのか、怒っているのか、悲しいのかなどを
まず判断した上で、会話の内容を推測しながら読み取っていきます。
無表情だとやはり分かりづらいです。相手の言葉が聞き取れたら、
私はそれをまず平仮名として捉え、頭の中で漢字に変換していきます。
いわば言葉のパズルをしているようなものです。声を一言一句、音として
理解できたとしても、聞いたことがない、あるいは意味が分からない言葉があると、
変換ができず、混乱することがあります。
そんなとき、私は必ず「今、○○とおっしゃったのでしょうか?」と再確認を
取るようにしているのですが、それがとんでもない間違いだったり、
見当違いだったりすることも。大笑いされることもたびたびです。
これがコメディーであれば、ボケたように受け取れるからなのでしょうが、
私は真剣です。やっぱり悲しい気持ちになります。
聴覚障害者の中には、補聴器などで声の聞き取りをしない人もいれば、
逆に読唇術が苦手な人もいますので、全員が同じというわけではありません。
周りにいる人が、その聞こえない人に適したコミュニケーション法を知ることで、
お互いの関係性も深まっていくことでしょう。
(サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)
◆プロフィール
本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。
2008年から福岡県久留米市在住。
漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。
=2018/11/08付 西日本新聞朝刊=
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