パイオニアが「聴覚障がい者も楽しめる音楽会」

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パイオニアが「聴覚障がい者も楽しめる音楽会」

を長年続ける理由とは

出典:「パイオニア」Press Release


聴覚に障がいのある人でも音楽を楽しめる「身体で聴こう音楽会」について、
パイオニア株式会社・身体で聴こう音楽会事務局長の山下桜さんに話を聞いた。


1992年から身体で聴こう音楽界を開催

 車載用音響機器などで知られるパイオニアは、1992年から

聴覚に障がいのある人でも音楽を心から楽しめる音楽会

「身体で聴こう音楽界」を開催し続けている。  


 音を振動に変える「ボディソニック」(体感音響システム)を用いて、

クラシックやジャズ、ポップス、ミュージカル、民族音楽など

さまざまなジャンルの演奏者を迎え、バラエティに

富んだプログラムを展開している。


音を振動に変えて全身で楽しむ


音楽会で使われている体感音響システムは、振動装置が組み込まれた

ポーチと座布団クッションで構成されている。


 生演奏の場合は、舞台にマイクを立てて音を拾い、こちらのミキサーで調整し

ボディソニックのアンプに信号を送り、ザブトンやポーチを振動させています。  

コンサートホールなどの会場では、3点吊りマイクの音声信号を音響室を通して

会場の座席まで送ってもらっています。


 振動が身体に伝わることで、聴覚に障がいを持った人

(補聴器を使っている難聴、または中途失聴の人)も、

ヘッドホンなどからの音と共に全身で音楽を楽しむことが可能に。  

生まれつき耳の聞こえないろうの方は、振動で音楽を楽しむことができる。

出典:「パイオニア株式会社」Press Release


創業者が発案して社員が「ボランティアに」と提案


 同社がこの音楽会を始めたキッカケは1972年にさかのぼる。 

創業者である故・松本望さんがロケット工学で有名な故・糸川英夫博士の

「音楽は耳と骨で聴いている」という提言をヒントに、自宅の研究室で

ボディソニックの研究・開発に着手した。 


 ボディソニック第1号が誕生した1983年~1984年頃に、当時会長だった松本さんが、

「この骨伝導を利用すれば、聴覚障がいの方も音楽やリズムを楽しめるのではないか」

と考え、聴覚障がい者団体等の協力のもと、さまざまな研究を実施。  


 聴覚障がい者の喜ぶ姿や感動した様子に感銘を受けた社員が

「ぜひ、企業のボランティア活動に」と提案し、実現したという。

 以来、試行錯誤を重ね、機材や運営面での改良を少しずつ加えながら現在に至っている。


 2017年度の開催数は52回です。 パイオニア主催の定期コンサートと 

外部団体主催のコンサートやイベントにも機材とオペレーションも含めて

貸出しをしております。 関東が中心ですが、昨年は仙台、広島、宇部、奈良などで実施しました。

提供:パイオニア


運営は社員がボランティア


音楽会の運営は社員がボランティアで行っているそうだ。

 事務局スタッフ以外は、当日は社員とその家族のボランティアにより運営

(会場づくり、ボディソニック設置、お客様対応など)されています。 


 パイオニアの企業理念「より多くの人と、感動を」に基づき活動しておりますが、

ボランティアの方にもいつも一緒に感動してもらえるような場づくりを心掛けています。  


 お客様の喜んでいらっしゃる笑顔を見て、ボランティアスタッフも元気や喜びを

頂き笑顔になり、出演者の方も笑顔になる、暖かい音楽会です。 

いつもボランティアの方に感謝の気持ちを忘れないようにしています。


音楽会に参加した人々からは、喜びの感想が寄せられているという。

 参加された聞こえない方からは、「諦めていた音楽をもう一度聴くことができた」

「久しぶりに音楽を楽しめた」「聞こえないということを忘れた時間だった」

「バイオリンの音を初めて聴いた」「聴覚障害の方に音楽を楽しむきっかけを与えてくれ、

そして夢と励ましを与えてくれます」などの喜びの声を頂いています。


「グッドデザイン・ベスト100」に選出


 音楽会は今年10月、「バリアフリー音楽会」としてグッドデザイン・ベスト100に選ばれた。 

音が聴こえない人たちのために、全身で聴く方法を開発したという「体験のデザイン」と、

長く継続して音楽会を続けている「社会貢献活動のデザイン」といった2つの視点で高く評価された。


 今回の受賞はこれまで助けてくださった多くの皆さまのおかげであると感謝しています。  

お客様の笑顔はもちろん、音楽会を通じてたくさんの優しい気持ちに触れ、

温かい気持ちで一杯になります。 

 そこがこの音楽会の魅力であり、次への原動力になっています。


定期コンサートは入場無料で、文字情報や手話通訳も付いているという。

聴覚障がいのない人も、参加できるのか?

もちろん一般の方もお申込みいただけます。


 ボディソニック席は定員50名の先着順。

健聴の人でも当日空きがあればボディソニックを体験できるという。  

今後の開催スケジュールは同社ホームページで案内しており、

参加申し込みはフォームかFAXで受け付けている。

提供:パイオニア


より多くの人と感動を


パイオニアは、なぜ長年にわたって音楽会を続けているのだろうか。

 この音楽会は、創業者の松本望が研究・開発した、音を振動に変える

ボディソニックを使用して聴覚障がいの方にも音楽を楽しんで頂いています。  


 創業当時からの信条「より良い音をより多くの人に」は今のパイオニアの企業理念

「より多くの人と、感動を」に引き継がれています。 


 社員はこの企業理念に基づき仕事をしています。 この音楽会もこの企業理念に基づいた

社会貢献活動であり、パイオニアらしいパイオニアにしかできない

パイオニアならではの活動です。  


 今後も聞こえない人に音楽を楽しんで頂き、より多くの人と感動を共有し、

たくさんの笑顔に出会いたいと思っております。


  私たちは聞こえない方を含むすべての人が音楽を楽しむことが

当たり前の共生社会を目指しています。




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