YOMIURI ONLINE 2018年10月11日
発達障害・三女の育児経験
卓球女子の平野美宇選手(18)(日本生命)の母・真理子さん(49)が、
発達障害のある三女を育ててきた経験などを生かし、中央市で開いている
卓球教室で障害者の指導に力を入れている。
理想に掲げるのは、「障害のある人とない人が分け隔てなく卓球を楽しむ環境」。
教室に通う一人で、知的障害がある横浜市の加藤耕也選手(25)は
2020年東京パラリンピック出場を目指し、15日から
スロベニアで開催される世界選手権に出場する予定だ。
中央の教室障害者10人
中学から卓球部で活動した真理子さんは、大学卒業後の3年間、
静岡市の特別支援学校で教員として勤務。
「良いところを伸ばす」をモットーに、発達障害のある三女・亜子さん(14)
の子育てにも奮闘した。
昨年6月に出版した著書
「美宇は、みう。 夢を育て自立を促す子育て日記」では、
亜子さんのことを「純粋無垢むくで癒やし系。私に亜子が必要だった」とつづった。
昨年12月、この本を読んで訪ねてきたのが、加藤選手だった。
加藤選手は中学、高校と卓球に打ち込んだが人と目を合わせられず、記憶力も良くなかった。
22歳で軽度の知的障害と診断され、スポーツ推薦で入った大学を中退。
それでも卓球は続け、一般社団法人「日本知的障がい者卓球連盟」(東京都)に加盟し、
知的障害者の世界ランクで34人中8位(今月1日時点)に入っている。
神奈川県のクラブチームに所属して技術を磨く一方、
精神面を強化するための指導者を探していたという。
卓球教室「平野卓球センター」では約80人のうち、発達障害や
聴覚障害などのある約10人を受け入れる。
健常者と障害者がペアでラリーなどの練習に取り組む。
亜子さんも6歳からラケットを握る。
美宇選手が帰省した際に教室で指導することもあるという。
加藤選手は週2回、車で2時間以上かけて同センターに通っている。
加藤選手の専属コーチとして同連盟に登録した真理子さんは、ホワイトボードに書いた
卓球台で戦術を説明し、フォームの映像を撮影して視覚的に伝える工夫を凝らす。
ラリーの練習をする加藤選手(右)を指導する真理子さん(2日、中央市で)
「試合で実力を発揮するための精神力を育てたい」と考え、加藤さんに
幼児から高齢者までの指導を任せ、コミュニケーション能力の向上も図っている。
加藤選手は真理子さんの指導を受け、「相手の顔を見て、動揺しているかなどの
心理を読み取れるようになった」という。
「ミスしても感情を抑えられるようになった」とも話し、精神面の成長も実感している。
4年に1度の世界選手権は東京パラリンピックの前哨戦。
加藤選手は「実力を試す良い機会。絶対に優勝したい」と意気込む。
真理子さんは「メダルを獲得すれば大きな自信になり、パラリンピックへ弾みがつく」
と話している。
(伊丹理雄)
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