東京新聞 2018年9月28日
難病の墨田・小沢さんの著書
聴覚障害者の演劇ユニットが舞台化
車いすで歌や講演の活動をして「いまを生きる」大切さを訴えている
小沢綾子さん(35)=墨田区=の詩集絵本「10年前の君へ 筋ジストロフィーと生きる」
(百年書房)が十月、聴覚障害者の演劇ユニットの手で舞台になる。
本の世界観を手話を交えたさまざまなパフォーマンスで表現。
小沢さんは「自分の小さな物語が、違う世界に大きく羽ばたいた」と、
自身も出演する本番を楽しみにしている。 (井上幸一)
稽古に臨む小沢さん(左から2番目)と庄崎さん(同3番目)。庄崎さんが手にしているのは、舞台で使う人形=いずれも杉並区で
二十歳で難病の筋ジストロフィーと診断され、「十年後に車いすになる」と
医師に告げられた小沢さん。「今日 君は絶望していると思う」で始まる
当時の自分に宛てた詩は、「安心して 10年後の君は 君が思っているほどに
悪いものじゃないから」の言葉で終わる。
今年三月に出版、次第に身体の自由を失っていった小沢さんが、全てを受け入れて
前に進む決意を示した初の著書だ。
舞台は、聴覚障害者の庄崎隆志さん(56)=横浜市=が主宰する
演劇ユニット「風の市(いち)プロデュース」が企画した特別公演の第二幕。
ユニットの広報担当者が、小沢さんとNPO法人「ユニバーサルイベント協会」の
活動を通じて知り合いだった縁で実現した。
著書につづられた思いを、弦楽器の演奏、庄崎さんの現代ダンスや、
朗読に合わせた人形の動き、手話、スクリーンの字幕といった健常者にも、
耳の不自由な人にも伝わる手法で表していく。
小沢さんは朗読の後半部分から登場、自身が作詞した曲「希望の虹」などを歌う。
第一幕で演じられるコメディ「ゆびのほとけ」の稽古風景
第一幕は、手話コメディー芝居「ゆびのほとけ」。
同級生の通夜の席で、耳の聞こえない人たちが再会する場面に、
笑いのエッセンスをちりばめた。字幕があり、誰でも楽しめる。
庄崎さんは、四十年近く演劇活動を続けてきた。杉並区の稽古場で、
自身と同じように障害のあるパフォーマーでもある小沢さんについて、
「心が伝わってくるので、言葉の壁を感じない」と語った。
小沢さんは「耳の聞こえない方に私の思いを届ける橋を架けてくれた」と
庄崎さんに感謝している。
公演は十月二、三日、中野区の野方区民ホール(野方五、西武新宿線野方駅から徒歩三分)で。
二日は午後七時から、三日は同一時半、同七時からの昼夜公演。
前売り三千円、当日三千八百円。車いす利用者二十人分のスペースもある。
問い合わせ、申し込みは、てぃだ企画=メールtiidakikaku@gmail.com=へ。
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