Yahoo!ニュース 8/23
助けたいという思いはろう者も同じ
~ 聴覚障害者団体として
全国初の災害ボランティア活動 ~
ボランティアの皆さん
ろう者のための災害ボランティアセンター
7月の西日本豪雨で甚大な被害を受けた広島。連日ニュースで報じられると
広島県ろうあ連盟へ会員から「ボランティアをしたい」という声が寄せられました。
4年前の安佐北区の土砂災害の時も力になりたいと思っていた会員もいたけれど、
聴者(耳が聞こえる人)とのコミュニケーションが不安で活動を諦めたという過去があります。
聴覚障害のある人は耳が聞こえないだけで体は元気です。同連盟はここで
ボランティアセンターを立ち上げて手話ができる人も集めて活動しようと
豪雨1週間後の7月14日に設立、SNSや機関誌などで呼びかけると
センターの想定以上に多くの人が集まりました。
聴覚障害者団体が独自で立ち上げるのは全国初。志願した人たちは
どのように活動したのでしょうか。
前例のない取り組みで見えてきた課題とは何でしょうか。
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ろう者宅での作業
最初は土砂がなだれ込んだろう者の大島昭男さんの家(安芸郡坂町)で作業をしました。
筆者が取材した8月4日に集まったのは1名の聴者を含む18名。
約150cmの高さまで土砂で埋まっていた家は何日かに渡る懸命なかき出し作業で、
この日は外壁の土砂はほぼ取り除かれていました。ボランティアは家族と一緒に
室内になだれ込んだ土砂のかき出し作業に励みました。
聴覚障害のある参加者に動機を聞くと
「テレビで被害の大きさを知り、助けなければいけないという
気持ちが自然に湧き出た」
「4年前の土砂災害ではコミュニケーションの面で不安があり、
遠慮したが、今回はろう者同士での取り組みということもあり
安心して参加できた」と話してくれました。
日々に拡大していく被害に心を痛め、何とかしたいという思いにかられ、
のべ5回も足を運んだ人もいれば、
「広島にお世話になったから」と神戸や京都から駆けつけた人もいました。
センターは設立した7月14日から8月11日の間で13日間作業をし、
のべ170人のボランティアが汗水を流しました。
かき出しをするボランティア
聞こえる人の家へもボランティアを派遣
大島さん宅の周りの家も土砂で埋まっていましたが、ボランティアの
手は足りない状況です。この地域は高齢化が進み、一人暮らしの人も少なくありません。
炎天下の作業は過酷を極め、ボランティアの数が足りないこと、
被災した多くの聞こえる人も困っていることを知ったセンターは、地域の家へ
ボランティアを提供するために坂町災害たすけあいセンターに団体登録をしました。
9時から14時半まで作業時間とし、10分活動して10分休憩する
というルールを守りながら、活動をしています。
坂町社会福祉協議会の齊藤祐介さんは
「人手不足なので、障害のある方も来てもらい、大変ありがたい。
障害を理由に断ることはしないので来ていただきたい」
と言います。
齋藤祐介さん
地域で作業をした、坂折知則さん(ろう者)はご家族の方は
手話ができる人に対応をお願いし、自分はご家族から指示を受けて作業をした、
「オッケー?だめ?」と身振りでコミュニケーションをとることができ、
ろうであることは問題ではなかったと話していました。
坂折知則さん
新たな課題
一方、活動を続けると新たな課題が見えてきました。
聴覚障害のある人は外見は健常者と変わらず、一見では分かりません。
作業先で休憩のためのテントを設営した時に、その土地の所有者との
やりとりがうまくいかずトラブルになったことがありました。
先方もまさかろう者がボランティアをしているとも思っていないため
誤解が深まったのでしょう。その場に手話ができる人がいなかったため、
ろうボランティアはなぜ、自分が叱られているのか分かりませんでした。
聞こえないことを最初から相手が知っていれば、お互いにコミュニケーションを
スムーズに運ぶことができたのかもしれないと考えた
広島県ろうあ連盟職員の横村恭子さんは、誤解をなくすために
「聴覚障害のある支援者」とプリントしたビブスを
ボランティアに着用してもらうなどの工夫が必要だと話していました。
横村恭子さん
今後は活動の幅を広げていく
「ボランティア活動をすることで初めて知ることがあります。
テレビや新聞では報じられないところで助けを求めているところは多い。
最初は市内で活動していたけれど、他の地域へも活動を広げたい」
と横村さんは意欲を示していました。
同連盟迫田和昭理事長は、
「聞こえる方は最初はろう者が来たことに抵抗があったかもしれません。
『ありがとう』『ご飯』『飲み物』などの手話を教えたら、興味を持ったようです。
簡単な手話で心を通い合わせたことが一番大きなことだと思います。
ろう者は助けてもらうばかりの立場ではありません。
ボランティアセンターを運営する都道府県、市町村の社会福祉協議会も
障害があるからと遠慮せず、聴覚障害者団体にも呼びかけて欲しい」
と言います。
迫田和昭さん
助けたいという思いは同じ
東日本大震災、熊本震災など大きな災害に見舞われる度、聞こえる聞こえないに
関わらず人々は力になりたいという気持ちを抱いています。
しかし、多くの聞こえない人たちはコミュニケーションの面で不安がある、
足を引っ張ってしまうのではと遠慮してきました。
それでも、センターを立ち上げたのは、困っている人がいたら
助けたいと思いは同じだからです。
広島県ろうあ連盟災害ボランティアセンターは、
今後は県全域へと活動の幅を広げる予定です。
ボランティアの皆さん
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