僕は目で音を聴く No,13

2018/07/12付   西日本新聞朝刊


僕は目で音を聴く(13) 

手話は目立つから困る?


 前の職場にいたときの話です。別のフロアで働いているろう者(耳の聞こえない人)

が用事で来たついでに、私のところに寄ってきて「午後も頑張ろう!」

と手話で声掛けしてくれました。忙しいときにそういう言葉はうれしいものです。


  こちらも手話で「ありがとう!」と返したところ

一人の聴者(聞こえる人)の同僚が私のところにやってきて

「ここは忙しい職場なので、手話は目立つ。皆の目に留まるから

悪いけど向こうで会話をして」と言うのです。


 とてもびっくりしました。だだっ広いフロアで、お客さんから

見える場所でもありません。手話も言語の一つなのに

それを否定された気持ちになってしまって…。

僕は目で音を聴く(13)手話は目立つから困る?(平本龍之介)


 忙しい職場は分かっていますが、口話(相手の唇の動きで言葉を理解し

自らは発話して意思伝達する)によって、例えば仕事に関係ない

世間話をしていても何も言われることはありません。

おかしくないだろうかと、もやもやした気持ちが収まりませんでした。


 ろう者の知り合いも、仕事の合間にろう者同士が手話で楽しく会話していた際

上司から「何の話をしていたの? どうして笑っていたの?」と聞かれたことがあるそう。

知り合いが怒って「あなたたちも会話して笑いますよね

どうして手話を使って笑ってはいけないのですか」と問い詰めると

上司は何も言えなかったといいます。


  関東の会社に勤めていた約10年前、ろう者の先輩が立ち上げた社内の

手話サークルで一緒に指導したことがあります。

月1回、仕事終わりに会議室で開き、5~8人の聴者が参加してくれました。


 ある人は避難訓練で通訳もしてくれて助かりました。

このように手話を理解し、歩み寄ってくれる人もいるのですが…。


 私の第一の言語は、心から楽しく語り合える手話です。

手話がろう者の大切なコミュニケーションの手段として受け入れられていないとすれば

不満に思う人は私だけではないはず。

聴者同士が話しながら笑い合うのと、何ら差はありません。  

(サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)


◆プロフィール 

本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。

2008年から福岡県久留米市在住。

漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。



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2018年07月19日 11時00分更新

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