聴覚障がい者ラグビーの世界大会

毎日新聞2018年6月1日 東京朝刊

聴覚障がい者ラグビーの世界大会で日本代表監督を務めた

落合孝幸(おちあい・たかゆき)さん(42)

4月、16年ぶりに行われた聴覚障がい者ラグビーの世界大会(オーストラリア)で

7人制日本代表を率いた。3位決定戦で敗れメダルは逃したが

優勝経験のある豪州から金星を奪った。

「海外チームに挑み、選手たちは大きく成長した」

自らも先天性の難聴。ぜんそくを克服するため

小学5年の時にラグビースクールで競技を始めた。

主将を務めた2002年の世界大会は、164センチ、64キロの

小さな体で巨漢選手にタックルし、準優勝に貢献した。

落合孝幸さん=高橋秀明撮影

しかし、世界大会の開催はその後途絶えた。聴覚障がい者は身体的ハンディが小さいなどの理由でパラリンピックに参加しておらず、スポンサーが集まりにくいためだ。17年12月に代表監督になっても、世界大会の参加費用の工面に苦労してきた。勤務先の建築設備大手「三機工業」の協賛もあり、出場にこぎつけた。


耳の聞こえない選手たちは手話で意思疎通している。使う必要のない軽い障がいの選手もいるが、「障がいの軽い人が重い人に歩み寄ることが大切」。今大会の豪州戦では、02年大会決勝での敗戦を知る選手たちが「監督のリベンジをしよう」と伝え合い、10-7で勝利した。


激しい接触があるラグビーは、安全上の理由から聴覚障がいの子供がプレーできないことが多い。「耳が聞こえない子供たちに楽しさを知ってもらいたい」。タックルの代わりに軽く触れる「タッチラグビー」の普及活動にも力を入れている。<文・写真 高橋秀明>


■人物略歴  

大阪府出身。筑波技術短大(現筑波技術大学)卒業。聴覚障がい者のクラブチームでも監督兼選手としてプレー。

毎日新聞2018年6月1日 東京朝刊



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