「音のない世界」の子どもたち。重度難聴の彼女がソニーを辞めてまで届けたかった「ことばの力」とは(デフサポ・牧野友香子) | 今井悠介 | スタディ通信 by Chance for Children
あなたは「音のない世界」を想像できるだろうか―。 私たちの多くは、普段、無意識に耳から様々な音の情報を得ながら生活している。 しかし、それはすべての人にとっての当たり前ではない。日本では、年間約1,000人の子どもが聴覚に障害を持って生まれてくる。 今回お話を伺ったのは、牧野友香子さん、31歳。聴覚障害の当事者であると同時に、難聴の子どもの教育支援を行う団体「デフサポ」の代表者だ。 牧野さんは、2歳のときに先天性の重度感音性難聴が判明。難聴者としては最も重度で、飛行機のごう音が聞こえない。 しかし、当時はろう学校への通学が一般的だった中、幼稚園から大学まで一般の学校に通い、耳が聞こえる子どもたちに交じりながら学校生活を送った。大学卒業後は、ソニー株式会社に入社し、7年間人事を担当した。 2017年、第一子が50万人に1人の難病をもって生まれてきたことを契機に、「デフサポ」を立ち上げた。現在はソニーを退職し、難聴の子どもの教育支援と親子へのカウンセリングを行っている。 牧野さんは、自身の生い立ちや当事者との出会いの中で、「ことばの力」の重要性を強く意識している。 「ことばの力」は、難聴の子どもたちに何をもたらすのか。牧野さんは、過去どのようにことばを学び、そして現在、どのように子どもたちのことばの習得を支えているのか。 牧野さんの日常と生い立ち、そして難聴の子どもやその家族との出会いを通じて感じた社会の課題とデフサポの取り組みについてお話を伺った。 【牧野 友香子(まきの・ゆかこ)】「デフサポ」代表。1988年大阪生まれ。横浜在住。先天性の重度感音性難聴の当事者。幼稚園から大学まで一般校に通学。大学卒業後、ソニー株式会社に入社し7年間人事を担当。障害を持つ第一子の出産を契機に「デフサポ」を立ち上げ、全国の難聴の未就学児の教育支援や親のカウンセリング事業を行う。 音のない日常 ――今日はよろしくお願いします。牧野さんは、今どれくらい聞こえているんですか? 全く聞こえてないですね。今は今井さんの「口を読んで」ことばを理解しています。私の両耳で聞こえるのは120db(デシベル)以上の音で、難聴のレベルとしては最も重度です。飛行機のごう音が聞こえないくらいです。
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