アステラス製薬 感音性難聴の新薬候補を導入

ミクスOnline
2019/07/19

アステラス製薬は7月17日、米Frequency Therapeutics社が感音難聴の治療薬として開発を進める「FX-322」について、米国を除く全世界での開発・商業化の独占的ライセンス契約を締結したと発表した。現在、感音難聴に対し承認されている標準治療はないという。同剤は、感音難聴の主な原因となる内耳の有毛細胞の損傷や欠落に対し、内耳に存在する前駆細胞を有毛細胞へ分化させ、聴力の回復を促すとされる。米Frequency社は2019年第4四半期に前期第2相試験を開始予定で、それ以降の後期第2相試験をどう進めるか、どこで開発を行うかなどを今後両社で検討する。


アステラスによると、「FX-322」はジェル状の製剤で、その中に複数の低分子化合物が配合されている新薬候補物質。Frequency社は臨床第1/2相試験をすでに終えている。重篤な有害事象はみられず、複数の患者において聴覚機能の改善がみられたとしている。


契約により、両社は共同で、グローバルでの臨床試験を行うほか、商業化のために必要な準備を進める。アステラスはFrequency社に対し、契約一時金8000万ドルを支払う。開発と商業化の進捗に応じたマイルストンとして最大総額5億4500万ドルに加え、契約地域での売上に応じたロイヤリティを支払う可能性がある。


同剤の導入についてアステラスは、「FX-322は再生の仕組みに注目したプログラムであり、最先端の科学、技術を積極的に取り込み、患者さんの価値に変えていくというアステラス製薬の戦略に基づく取り組み」と説明している。





日本経済新聞
2019/7/17

アステラス製薬と米Frequency社、再生アプローチによる難聴対象プログラムに関する独占的ライセンス契約を締結


発表日:2019年7月17日

 アステラス製薬と Frequency 社


再生のアプローチによる難聴を対象としたプログラムに関する米国を除く全世界における独占的ライセンス契約締結


アステラス製薬株式会社(本社:東京、以下「アステラス製薬」)は、Frequency Therapeutics,Inc.(本社:米国マサチューセッツ州、以下「Frequency 社」)と、Frequency社が有する感音難聴を対象としたプログラムである FX-322 の開発および商業化に関し、米国を除く全世界における独占的ライセンス契約を締結しました。


本契約に基づき、アステラス製薬は契約地域において FX-322 の開発、商業化のための権利を取得し、これらに要する費用を負担します。Frequency 社は米国における開発、商業化の権利を留保します。両社は共同で、グローバルでの臨床試験を行うほか、商業化のために必要な準備を進めます。アステラス製薬は Frequency 社に対し、契約一時金 80百万ドルを支払います。また、開発と商業化の進捗に応じたマイルストンとして最大総額545 百万ドルに加え、契約地域での売上に応じたロイヤリティを支払う可能性があります。


FX-322 については、米国において Frequency 社による臨床第 I/II 相試験が終了しています。FX-322 の単回鼓室内投与において重篤な有害事象はみられず、良好な忍容性が確認されました。また、複数の患者において聴覚機能の改善がみられました。Frequency社は、2019 年第 4 四半期に前期第 II 相試験を開始する予定です。


FX-322 は低分子化合物を組み合わせた新薬候補物質で、内耳に存在する前駆細胞を有毛細胞へ分化させることにより、聴力の回復を促すことが期待されます。感音難聴は内耳の有毛細胞の損傷や欠落が主な原因で発症します。有毛細胞は一度障害を受けると自発的に再生することはできません。しかし、静止状態にある内耳の前駆細胞は有毛細胞に増殖・分化できる事がわかっています。 


 世界保健機関(WHO)によると、全世界で 8 億人以上の成人が難聴であると推計されています。また、米国の国立衛生研究所(NIH)の推計では、難聴の約 90%は感音難聴に起因するものとしています。現在、感音難聴に対して承認されている標準治療はありません。


Frequency 社の CEO である David Lucchino は「治療選択肢のない疾患に対して再生のアプローチによる革新的な医薬品を患者さんのもとに届けていくために、グローバルでの臨床開発と商業化において多くの知識と経験を持つパートナーと協働する機会を得ることができました。私たちは、アステラス製薬と協力して FX-322 の開発を進めていくとともに、前駆細胞を活性化させる私たちのプラットフォーム技術の可能性を証明していくことを大変楽しみにしています」と述べています。


アステラス製薬の代表取締役副社長 経営戦略担当である岡村直樹は、「FX-322 は再生の仕組みに注目したプログラムであり、本提携は、最先端の科学、技術を積極的に取り込み、患者さんの価値に変えていくというアステラス製薬の戦略に基づく取り組みです。私たちは今後、世界中の難聴患者さんのアンメットメディカルニーズに応える新たな治療法となり得る FX-322 の開発を進めてまいります」と述べています。


なお、本件による業績への影響は、2020 年 3 月期連結業績予想に織り込み済みです。


以上


■感音難聴について

感音難聴は難聴の中で最も多く、内耳に存在する有毛細胞や内耳から脳へ音を伝える神経回路の障害で生じます。有毛細胞の損傷や欠落の原因としては、通常、長期間の騒音への曝露や加齢、特定のウイルス感染、耳毒性薬物への曝露が考えられています。WHO の推計では、レクリエーション活動などによる騒音への曝露により 12~35 歳の小児および成人の 11 億人が将来的に難聴を発症するリスクがあるとされています。


■アステラス製薬について

アステラス製薬株式会社は、東京に本社を置き、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」ことを経営理念に掲げる製薬企業です。アステラス製薬の詳細については、( https://www.astellas.com/jp/ )をご覧ください。


■Frequency Therapeutics,Inc.について

Frequency 社は、体内の細胞を刺激して生物学的機能を回復させ、健常組織へと修復させる低分子化合物の開発に注力しているバイオテクノロジー企業です。細胞を一時的に活性化することによって、複雑な遺伝子工学の技術を用いることなく疾患に対する治療法の開発を目指しています。Frequency 社の開発候補は、低分子化合物の独自の組み合わせにより前駆細胞を増殖し、新しい細胞へと誘導します。Frequency 社のリードプログラムは聴力回復を対象としており、さらに同社の Progenitor Cell Activation プラットフォーム技術は幅広い治療分野に応用できる可能性があります。Frequency 社の詳細については( http://www.frequencytx.com )をご覧ください。


■注意事項(アステラス製薬)

このプレスリリースに記載されている現在の計画、予想、戦略、想定に関する記述およびその他の過去の事実ではない記述は、アステラス製薬の業績等に関する将来の見通しです。これらの記述は経営陣の現在入手可能な情報に基づく見積りや想定によるものであり、既知および未知のリスクと不確実な要素を含んでいます。さまざまな要因によって、これら将来の見通しは実際の結果と大きく異なる可能性があります。その要因としては、(i)医薬品市場における事業環境の変化および関係法規制の改正、(ii)為替レートの変動、(iii)新製品発売の遅延、(iv)新製品および既存品の販売活動において期待した成果を得られない可能性、(v)競争力のある新薬を継続的に生み出すことができない可能性、(vi)第三者による知的財産の侵害等がありますが、これらに限定されるものではありません。また、このプレスリリースに含まれている医薬品(開発中のものを含む)に関する情報は、宣伝広告、医学的アドバイスを目的としているものではありません。







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