読売新聞オンライン
2019.3.24
聴覚障害者ら向けに観戦専用ウェブアプリを開発した若月大輔准教授(22日、筑波技術大で)
実況・解説・歓声即時に投稿
聴覚障害者らにスポーツ観戦を楽しんでもらおうと、筑波技術大(つくば市)の研究者が、試合の実況や解説などを文字で投稿して即時にやりとりできるインターネット上のウェブアプリを開発した。今秋の茨城国体と全国障害者スポーツ大会で実証試験を行う。大規模な大会では初の試み。来年の東京五輪・パラリンピックまでに実用化し、一般に広く使ってもらう予定だ。
聴覚障害者は、試合観戦に行ってもアナウンスが聞こえず、周りの観客とのコミュニケーションもとりづらい。試合の流れが把握できなかったり、他の観客と一緒に盛り上がったりできないことが多かった。大会によっては専用席で手話や筆記による通訳を受けられるケースもあるが、好きな場所で観戦できず、席にも限りがある。
同大の若月大輔准教授(43)は、「スポーツ観戦では、障害を持った人でも情報が受け取れる『情報保障』が不十分。障害者が観戦から足が遠のく一因になっていた」と語る。
そこで若月准教授らは、投稿した文章や写真が時系列順に表示される観戦専用のウェブアプリを制作。ツイッターに似た形式で、投稿はすぐに反映されて最新の投稿が一番上に表示される。登録不要で誰でも使えるようにし、観戦者同士で自由に投稿してもらう考え。
投稿内容は、実況や解説のほか、ルールの説明や選手の紹介などを想定している。臨場感を高めるため、「やった」「ゴール!」などの歓声は、文字が画面を横切るように表示させることも可能だ。若月准教授は「アプリは聴覚障害者だけでなく、(文字を読み上げる機能を使えば)視覚障害者や健常者の観客にとっても役立つ。互いに支え合ってスポーツを楽しめる環境を作りたい」と話している。
実証試験には県やつくば市も協力し、同市が会場の車いすバスケットボールとスポーツ鬼ごっこの試合で行う。アプリのサイトは大会プログラムなどで公表する。25日から、試験の経費をインターネット上で募るクラウドファンディングを始める。問い合わせは電子メール(office@iseee.info)。
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