朝日新聞デジタル
2019年3月21日
大津市の不動産会社で、毎朝5分間の「手話教室」が開かれている。
聴覚に障害がある女性社員が入社を機に発案した。
その日出社している社員全員に、身ぶり手ぶりで教え続けて約4年。
自然に手話を使える社会になってほしいと願う。
午前9時、大津市衣川(きぬがわ)1丁目の不動産会社「ピアライフ」。
いつもの手話教室が始まった。
社員たちと一緒に指文字を作る大川さん(左)=大津市衣川1丁目
講師は賃貸事業部社員の大川葵さん(26)。
入社4年目で、普段は契約書の作成のほか、お客に駐車場の提案などを担当している。
手話教室は朝礼に組み込まれている。
この日は背広姿や制服姿の社員ら約15人が参加した。
「『コーポ衣川』を指文字でお願いします」。
大川さんから指名された社員が、1文字ずつ指で形を作った。
社員が途中で行き詰まると、すかさず大川さんが笑顔でヒントを出した。
大川さんは栗東市で育った。
2歳で難聴とわかり、地元の公立小学校の支援学級などで言葉を学んだ。
補聴器を使い、相手の唇の動きから言葉を読み取っている。
県立聾話(ろうわ)学校を経て大学4年で就職活動を始めた。
「裏方の仕事に就くしかないのかな」。
選べる会社が絞られると思っていた。
案の定、電話対応ができないことを告げると、なかなか面接に進めなかった。
そんな時、ハローワークでピアライフの求人を見つけた。
不動産会社といえば、カウンター越しに接客しているイメージ。
働く姿は想像がつかなかったが、ホームページを見ると変わった。
社員一人ひとりの趣味などが写真入りで紹介され、「会社の雰囲気が温かそう」と感じた。
ファクスを送ると面接が決まり、まもなく採用された。
「仕事とは、多くの人が幸せに生きていくために支えることだと学びました。今度は私が仕事を通して多くの人の役に立てるようにしていきたい」。
2015年4月に入社した大川さん。
県内中小企業の合同入社式では、新入社員を代表して誓いの言葉を述べた。
「あなたにしかできない仕事があるのでは」。
内定後、永井茂一社長(58)から言われたことを思い出した。
永井社長に働きかけ、手話教室が始まった。
「おはよう」「お疲れさま」な…・・・
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