産経ニュース
2019.3.6
「病気が悪いわけではない。病気と向き合ってこなかった被告が事件を引き起こした」。
佐野拓哉被告の判決を受け、亡くなった井出安優香(あゆか)さんの父、
努さん(46)と母、さつ美さん(47)が6日、大阪市内で記者会見した。
「最も重い判決」を求めてきたこともあり、懲役7年を言い渡した判決には
「正直、納得できない」とやりきれない思いを語った。
この日、努さんは事故当日に着ていたスーツで公判に臨んだ。
普段から身につけている安優香さんの補聴器もいつものように上着の中にしのばせた。
「(公判へ安優香さんと)一緒に行こう」との思いからだ。
佐野被告から直接の謝罪はいまだに受けていない。
公判で佐野被告が謝罪の言葉を口にすることもあったが、
自身の罪を軽くするためのものとしか思えず、2人の心には響かなかった。
安優香さんが生きた11年よりも、まな娘を奪った被告の懲役刑は短い。
努さんは
「反省していない人間が懲役7年。それがすごく悔しいし、納得できない」
と怒りを押し殺した。
努さんは2月13日、公判で意見陳述した。
それによると、安優香さんは生後1カ月で先天性の難聴と分かり、
4歳から生野聴覚支援学校の幼稚部に。
聴覚に障害のない子供よりも言葉数が少なかったといい、
必死になって親子で勉強した。
努さんにとって、手をつないで最寄り駅まで歩き、電車の中で
安優香さんから手話を教わるのが日課。
努さんは会見でも事故当日の朝を思い起こした。
バレンタインデーに近かったこともあり、
「2月は何があるかな」と手話で尋ねると、安優香さんは
含み笑いを浮かべて「内緒」と返した。
「にこっと笑ったのがとてもかわいくて。駅に着いてハイタッチをして別れました。『きょうも一日がんばってね』と」。
それが最後の姿だった。
さつ美さんは会見で「娘だったら思う」ことを手話で表現した。
「私(安優香さん)はお父さんとお母さんが小学部の卒業式に来てくれることを楽しみにしていました。これからしたいこともたくさんありました。将来の夢はすてきなお母さんになることでした。それがかなわず、とても悔しいです」
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