@S[アットエス] | 静岡新聞SBS
2019/2/27
静岡県内で生まれつきの聴覚障害の子どもに
人工内耳を装着する治療・介入が進められている。
早期に手術し適切な療育を受ければ、一定の聴力を獲得できるとされる。
赤ちゃんの聞こえ具合を調べる「新生児聴覚スクリーニング」の
受検率100%を目指した取り組みや相談・支援体制の構築で、
先天性難聴の早期発見・介入に努めてきた本県。
厚生労働省は2019年度、人工内耳を使用した子どもに関する
研究を本格化させる方針で、県内の関係者は環境整備の加速に期待を寄せる。
人工内耳を使用する子ども。「きこえを育む親子教室」では、言語聴覚士が親子をサポートする=1月下旬、静岡市葵区の静岡県立総合病院
「普通の大きさの声に反応した瞬間は忘れない」。
新生児聴覚スクリーニングで異常が見つかり、生後11カ月で
人工内耳を埋め込んだ男児(1)=藤枝市=の母恵さん(32)は、
術後の変化をこう振り返る。
現在は、県立総合病院(静岡市葵区)内の県乳幼児聴覚支援センター
で開かれている人工内耳の手術を受けた子どもと家族のための
「きこえを育む親子教室」に参加している。
同教室は毎月、言語聴覚士らが発達を促す遊びや
語り掛けの方法をアドバイスする。
こうした場は全国的にも珍しく、現在、県内各地の12組が登録している。
難聴児を育てる親同士の情報交換の機会でもあり、生後10カ月の時に
手術を受けた焼津市の男児(1)の母(28)は
「生活や教育のことを先輩ママから聞き、将来の楽しみが感じられるようになった」
と語る。
本県では医療機関に対するスクリーニング機器の購入助成のほか、
親子を支える聴覚支援センターの整備などが行われてきた。
厚労省の研究本格化で、人工内耳への注目はさらに高まるとみられる。
■国が研究本格化、環境整備期待 データ収集、行程表作成へ
人工内耳を使用した子どもに関しては、日本ではこれまで具体的な
人数や症状の把握ができておらず、療育を見据えた多職種連携などは十分でなかった。
人工内耳は、聴覚をつかさどる蝸牛(かぎゅう)の機能を代替する医療機器。
先天性難聴は新生児の2000人に1~2人の割合で、このうちの一部に
人工内耳の適応が見込めるという。
厚生労働省はこうした人工内耳を使う子どもに関する
データの収集などを進め、発見から療育までのロードマップの作成につなげる。
厚労省の勉強会で事例報告を行ってきた県立総合病院の高木明副院長によると、
1歳前後で人工内耳を装着し、適切な介入が行われれば、
就学時には健聴児と同等の音声言語が獲得できるという。
ただ、国内では1歳前後で手術を受ける割合が諸外国に比べて低い。
オーストラリアでは生後6カ月からの手術が推奨され、専門機関の介入によって
9割が特別支援学校でなく一般校に進学しているとし、
「日本でも関係者の意識を高めたい」
と話す。
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