読売新聞オンライン
筑波技術大(つくば市)の研究グループが1日、解説員の説明を即時に
文字に変換してスマートフォンなどに表示するシステムの実証実験を
水戸市の県近代美術館で行った。
展示の解説員(右)の音声を文字に変換し、聴覚障害者向けにスマートフォンやタブレット端末に表示する(1日、水戸市の県近代美術館で)
聴覚障害者らに文化施設のガイドツアーなどを楽しんでもらおうと開発中で、
現場での実験は初という。
システムは、インターネット上で音声を文字に変換するサービスを利用。
解説員につけたピンマイクで音声を拾い、スマホを介してデータを送信。
変換された文字データを聴覚障害者が持つスマホやタブレット端末に配信する仕組みだ。
この日は、聴覚に障害のある同大の学生5人が参加。
同館では、毎日決まった時間に解説員が展示を説明する20分程度の
ミニガイドを行っており、実験はこのガイドを利用し、一般客も交じる中で行われた。
「この絵は浮世絵の影響も見て取れます」
「年代に応じて作風が変わっているのがわかります」。
解説員が説明すると、数秒後には文章がスマホなどに表示された。
芸術家の固有名詞や専門用語があらかじめ登録されているため、変換ミスは少ないという。
参加した同大4年の男子学生(22)は
「解説員の説明とほぼ同じタイミングで文字が表示されるので
ツアーの雰囲気についていきやすい」と話した。
実験ではスマホのほか、タブレット端末を解説員の胸から下げてもらったり、
作品の近くでスタンドに立てたりして文字を表示。
作品を鑑賞しながら文字を読みやすい方法を探った。
同館副参事の小沼賢次さん(53)は
「文字の表示は耳の遠い高齢者にも役立つ。幅広い人が楽しめる美術館に
するにはどうすればいいか考えていきたい」と話す。
研究グループは今後、内容をわかりやすくするための文字の表示方法や、
雑音の多い環境でもシステムを使えるかどうかなどを検証していく。
グループの生田目美紀教授(59)は
「障害者も健常者と同じように文化施設を楽しめるようにするのが目標。
社会の障壁を取り除いていきたい」
と話している。
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