CRI日本語 2019-02-01
中国北方の天津市では、とても特徴的な児童合唱団・天津子どもイルカ児童合唱団
が活躍しています。合唱団のメンバーは、程度は異なるものの生まれつき聴覚障害を
持っている子供たちです。
しかし、子供たちは弛まぬ努力を経て、2016年にロシアのソチで開催された
第九回世界合唱コンクールで銀賞を受賞し、世界音楽の舞台で異彩を放ちました。
今回の中国メロディーはそんな児童合唱団の物語と歌をご紹介しましょう。
「子供イルカ」の滝登り
中国には昔から「鯉の滝登り」という諺があります。
伝説の勇ましい子どもの鯉が黄河の激流を上りきって、龍に変身したという
伝説に由来するものです。
天津子どもイルカ児童合唱団の子供たちにとって生まれつきの
聴覚障害は黄河の激流のようなものです。
天津子どもイルカ児童合唱団のメンバーは、みんな人工内耳を付けています。
合唱団の創始者・肖玲団長は天津身体障害者連盟に所属する聴覚障害者の言語教師です。
彼女の子供も聴覚障害を持ち、息子が幼いころから人工内耳をつけています。
しかし、人工内耳の技術には限界があり、言葉を発してもメリハリがなく、
いつも周りの子供たちに笑われ、卑屈になってしまいました。
肖玲は多くの人工内耳を付けている聴覚障害の子どもが
息子と似たような境遇を抱えていることに気付き、子供たちに歌を教え、
歌の感情と旋律で子供たちの耳を呼び起こそうと考えました。
2014年11月に天津子どもイルカ児童合唱団は多くのボランティア
の支援の下で成立し、ボランティア達の愛によって子供らの耳を呼び覚まし、
鯉の滝登りを実現させました。
音楽で心の扉を開く
データによりますと、毎年、1千人の新生児の中に
難聴を持つ子供は2人いるということです。
5歳の雨涵ちゃんの一日はお母さんが彼女に
人工内耳を付けるところから始まります。
小さな人工内耳は彼女と普通の人の世界を近づかせると同時に、
彼女に特別なラベルを貼りつけました。
彼女は幼いころからほかの子との違いに気づき、
いつも恥ずかしく思っていました。
しかし、半年前から雨涵ちゃんの生活は変わり始めました。
音楽に触れるようになり、毎週土曜日の午前、彼女は天津市河西区文化センターに通って、
十数人の彼女と似たような境遇の児童合唱団のメンバーと共に
ボイストレーニングを受けています。
人工内耳の技術には限りがあるため、雨涵ちゃんの
音への判断は普通の人よりも難しいものです。
ドレミのドの音でさえも1週間繰り返し練習しなければなりませんが、
子供たちのわずかな進歩でさえも、合唱団の先生たちにとっては大きな喜びです。
活躍の場を広げようと、合唱団は子供たちが様々な交流活動に
参加できるように手配しています。
春節を控え、雨涵ちゃんは合唱団の子供たちと
馬場道小学校演劇社を訪れました。
子供たちは人工内耳を付けていることを隠すことなく、
心の扉を開いて、同じ年の生徒たちと楽しく交流しました。
そして、雨涵ちゃんと合唱団のメンバーの素晴らしいパフォーマンスは
馬場道小学校の先生と生徒を驚嘆させ、先生は
「合唱団の子供たちは普通の子供たちよりも素晴らしいと思う」
と感想を語りました。
世界合唱コンクールで頭角を現す
天津子どもイルカ児童合唱団は人工内耳を掛ける
聴覚障害の子供たちから構成されています。
肖玲団長は子どもイルカと名付けたことについて、
「子供たちがイルカの出す超音波のような迫力ある歌声で歌えることを期待している。
最初、子供たちがはっきり話せるように、簡単な歌を歌えることだけを望んでいたが、
結局、子供たちの歌唱力と表現力は予想を大きく超えた」
と話しています。
2016年に第9回世界合唱コンクールがロシアのソチで開催されました。
天津子どもイルカ児童合唱団は唯一の身体障害を持つ児童合唱団として
世界70カ国300近くの合唱団の中で頭角を現わし、
民謡部門銀賞を受賞しました。
合唱団の芸術監督で、作曲家の張如昕は
「世界合唱コンクールに参加することは子供たちの歌唱力を示すためではなく、
子供たちがより明るくなって、自信をつけてほしいからだ。
子供たちの負けず嫌いの精神はすべての人々を感動させた」
と語っています。
夢を持つ鯉のように突き進む
今、天津子どもイルカ児童合唱団のメンバーは最初の7人から28人にまで増えました。
また、社会各界からのボランティアが絶えず参加するようになり、
音楽や舞踊、伴奏、撮影などの面で子供たちを無償で支援しています。
合唱団での学習と稽古を経て、耳の不自由な子供たちは明るさと
自信を持つようになりました。
雨涵ちゃんは「音楽を聞くと、とても楽しい」と語っています。
親とボランティアの暖かい見守りがあるからこそ、可愛い天使たちは
世界の音楽の舞台で活躍することができ、
激流を昇り龍に変身する夢を持つ鯉のように突き進んでいます。
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