奈良 障害者も命守る力を

YOMIURI ONLINE  2018年11月21日


◇明日香養護学校で救命講習  

 障害のある子どもたちに救急救命法を学んでもらう取り組みを

県立明日香養護学校(明日香村)が始めた。


 発作などで救急搬送されることも珍しくなく、今は守られる立場の児童生徒たちだが、

将来的に、自分の命も、人の命も守れる力を身に付けてほしいと願うからだ。


 中学部の教諭が講習会を初企画し、中学1~3年生15人が

AED(自動体外式除細動器)の使い方などを学んだ。

(中井将一郎)


◇「みんなできることがある」  

 19日午前、学校の体育館。訓練用の人形の横に生徒たちが並んだ。

ほとんどの子が車いすを使っている。一部は車いすから降りて臨んだ。


  NPO法人・大阪ライフサポート協会理事長で医師の西本泰久さん(66)が

「年間に6、7万人が心臓の異変で突然死しており、子どももスポーツ選手もいる。

救急車が到着するまでに、胸を押す『胸骨圧迫』(心臓マッサージ)をすることが肝心」

と説明した。  


 方法を教わった生徒たちは「大丈夫ですか」「119番してください」

などと声を上げ、人形に胸骨圧迫を施した。


 規則的に押せるように太鼓をたたいてリズムをとる生徒も。

額に汗を浮かべながら体験した3年島川宙士そらと君(14)は

「強く押すのが難しかったけど、だんだんとコツがつかめてきた。

倒れている人がいたら助けたい」と話した。


  西本さんは「勇気をふるって声を掛けたり、助けを呼んだり。

それだけで命を助けられることもある」と語りかけた。


  講習会のきっかけは、中学部教諭の背古三保せこみほさん(49)が

今年2月に救急救命セミナーに参加したこと。


 受講してみると、ダウン症の男性が胸骨圧迫を学んでおり、1か月後に

受講した時には車いすの人や聴覚障害者もいた。


  「助ける人、助けられる人が別々ではなくて、誰でも救命できる。

目からうろこが落ちたようだった」  


 背古さんは、セミナーの講師だった協会理事で高田消防署救急救命士の

今井譲二さん(56)に「養護学校の子どもたちにも受けさせたい」

と相談し、準備を進めてきた。


  生徒の障害の程度、種類は様々で、当初は体験する生徒を選ぶ予定だったが、

講師を派遣する協会から「大声を上げたり、AEDのボタンを押したりと、

それぞれにできることがある」と提案され、全員参加に切り替えた。  


 初めての講習会で、自分にできることを懸命にこなす教え子たちの姿に、

背古さんは「子どもたちは、命は絶対に助けないといけないということを実感したと思う。

社会の一員として、助ける側になれることを学んでほしい」と話した。




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