長野県 災害情報弱者 支援態勢の再検討を

信毎web  10月8日



 地震や台風など今年相次いだ災害で、障害者や外国人に避難先などの防災情報が伝わらず、

孤立させてしまうケースが出ている。


  北海道で最大震度7を記録した地震では全域が停電。テレビがつかず

スマートフォンの電池も減る中、聴覚障害者は頼りのラジオも聞けず、周囲の様子が

分からなくなった。停電が長引く中、家でじっと過ごすことしかできない人がいた。


  旅行中の外国人は言葉が通じず、情報が得られないことに不安やいら立ちを募らせた。


  長い停電は台風24号でも起きた。情報弱者ともいえる人との壁を乗り越え、

災害時のスムーズな情報提供を実現するにはどうすればよいか。再検討が求められる。 


 北海道の地震では情報ツールとしてのスマホの重要性が浮き彫りになり、

多くの「充電難民」を生んだ。北海道ろうあ連盟によると、充電しようと

店舗などを訪れても口頭での対応しかなく、諦めて帰った人が多かった。


  札幌市の公園には行き場を失った外国人の姿が見られた。駅などの案内は

日本語と英語に限られる場合が多く、スマホの電池が切れた中国人観光客は頭を抱えた。


 台風21号で被害を受けた関西空港でも、外国人の対応が不十分だったとの指摘が出ている。 


 聴覚障害者は外見では分かりにくく、近所の人も把握していないことが多い。

 普段は特に支援を受けずに暮らす障害者や、一時的に滞在する訪日客の災害対応は

盲点になっていなかったか。どんな備えが必要かを改めて考えたい。


  三重県では、専門知識のある支援センターの職員らが、事前に渡された名簿を基に

聴覚障害者の安否確認などを行う態勢をつくっている。


 近隣住民も含め、頼れる人へのアクセスをあらかじめ確保しておくことが重要だ。

外国人についても、災害時に頼ることができる存在を事前に用意することが対策の鍵となる。

  京都市は5言語に対応できるコールセンターを設置している。


沖縄県には、国際交流・人材育成財団が市民から養成した「サポーター」が

避難所を回り外国人の相談に当たる仕組みがある。こうした事例を広く共有すべきだろう。  


 訪日客は昨年、過去最多の2869万人を記録。政府は東京五輪のある

2020年に年間4千万人を目指しており、訪日客への災害対応は大きな課題といえる。


  一人一人が災害時の情報不足に悩む人とのつながりを心掛けることの

重要性も確認しておきたい。 

 (10月8日)




神戸新聞NEXT2018/10/06


北海道地震/電力分散が復興の出発点

 最大震度7を観測した北海道の地震から1カ月たった。大規模な土砂崩れが起きた

厚真町などでは地域再建に向けた懸命の取り組みが続いている。


  一方、大部分の地域はライフラインや交通網が回復し、落ち着きを取り戻している。

ただ道内の全域停電(ブラックアウト)による風評被害などの影響は今も残る。

旅行や地場産品の購入などで、基幹産業の観光や農林水産を支援していきたい。  


 宿泊キャンセルなど観光業の損失は約356億円に上る。道内の観光地は、

地震後の状況の情報発信や温泉入浴料割引などのキャンペーンに力を入れている。

宿泊費などを公費補助する「北海道ふっこう割」も全国に広める必要がある。


  一方、ブラックアウトは酪農業に大打撃を与えた。搾乳の機器が動かず、

乳房炎になった牛は1万頭を超す。乳業工場も停止し大量の生乳が廃棄された。


  北海道電力は、震源地に近い火力発電所に電力需要の多くを依存してきた。

このシステムがブラックアウトの大きな要因だ。人災との批判も強い。


  災害に備えるには電源の分散化が重要になる。北海道で有望視されるのが、

ふん尿などからガスを生産し発電に使う畜産バイオマス発電だ。


  処理コストのかかるふん尿が、資源になる。欧米では農業経営や地域経済への

メリットから導入が進む。北海道でも自治体なども連携して、気象条件などに

左右されない安定電源として普及し始めていた。 


 ところが北海道電は、電力余剰や送電線の容量不足を理由にバイオマス発電の

受け入れに制限をかけている。建設が中断に追い込まれた発電所もある。


  人口が北海道と同程度のデンマークは、分散型システムでエネルギー自給を

ほぼ達成している。北海道電は、エネルギー源を積極的に見直す意識に乏しいというほかない。


  道内には風力や水力などの自然エネルギーが豊富に点在する。

大規模発電所に頼る発想のままでは持ち腐れになる。


  大停電を教訓として、環境保全や防災力向上のために地域で自立した

エネルギーインフラを築く。そのことを、北海道の復興の出発点とせねばならない。




どうしん電子版(北海道新聞)  10/06


地震から1カ月 冬に向け復興の加速を

 胆振東部地震は、発生から1カ月がたった。

 余震は依然収まらず、きのうは最大震度5弱の揺れに、不安を覚えた人も多いだろう。 


 ブラックアウト(大規模停電)の影響も薄らぎ、全道的には平穏な日常が

戻りつつあるとはいえ、胆振管内の厚真、安平、むかわの被災3町では、

復興に向けた懸命な取り組みが続く。


  今も400人を超える人が避難生活を余儀なくされている。

道民一人一人が被災地に心を寄せ、支援に努めたい。


  厳しい冬が迫っており、スピード感のある対応が不可欠だ。  

国や自治体は、被災者が一刻も早く再出発を図れるよう、しっかり後押ししなければならない。 


 今回の地震では、約1万4千棟の建物に被害が出ている。1993年の

北海道南西沖地震の1・8倍に上っており、道内の地震被害としては過去最多だ。


  多くは「一部損壊」とされ、原則的に仮設住宅への入居が認められず、

支援金も受け取れない。冬が来る前に、生活の再建を急がなければ、ス

トレスが震災関連死につながることも懸念される。

国は入居基準を緩和するなど柔軟に対応すべきだ。 


 15万棟超が一部損壊となった熊本地震では、熊本県が、修理費に

100万円以上かかった世帯に義援金から10万円を支給する制度を創設して援助した。


  高橋はるみ知事はリーダーシップを示し、被災の実情を踏まえた支援策を検討してほしい。  

熊本県では、2年が過ぎた今もプレハブなどの仮設住宅で約2万7千人が暮らしている。  


 高齢者や病人ら災害弱者の見守りを含め、中長期的な視点でのサポートが肝心だ。  

被災者の間には、地震に対する恐怖で、不眠や心身の不調を訴えるケースが相次いでいる。

心のケアも欠かせない。  


 被災3町は、中小企業の支援について、「局地激甚災害」の対象に指定された。  

商工業の被害額は、3町だけで少なくとも48億円に達する。  

時間がたてば、廃業に追い込まれる業者が増える恐れもあり、素早い対応が求められる。


  被災3町は、国と道に対し、復興基金の創設を要望している。  

基金を財源に、既存制度では補助の対象外となる事業に対し、各自治体の判断で、

きめ細かな支援が可能になるだろう。速やかに創設してもらいたい。


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