石川 職員向け手話講座

毎日新聞  2018年8月9日


能美市消防本部 職員向け手話講座 

聴覚障害者の不安解消


 事故や災害、急病といった緊急時、聴覚障害を持つ人は

救急隊員とのやり取りがうまくいかないことがある。


 当事者の不安を解消しようと、石川県能美市は今月、

市消防本部の職員向けに手話講座を初めて実施した。

今後、他の部署などに対象を広げて開講し、

聴覚障害者への理解を深める方針。【日向梓】  


 能美市は今年4月、手話言語条例を制定。

手話への理解を広げ、聴覚障害のある人が安心して暮らせる街を目指す。


 今回の手話講座は市内の当事者の要望を受けて実施した。

手話通訳の資格を持つ市福祉課の原仁美主事がコーディネーターを務めた。

手話で「危ない」と示す石川県能美市福祉課主事の原仁美さん。「手話にも方言があり、表現が異なる」という
=能美市来丸町で2018年7月30日午後1時25分、日向梓撮影


  障害者総合支援法は市町村に、聴覚障害の当事者の要望に応じて

手話通訳者を派遣することを義務づけている。


 能美市では救急車への同乗を求められるケースが年に数件あるといい、

原さんは「病院で筆談での問診に1時間かかったケースもあると聞く。

手話を使えなくても、答えやすい質問をするなど工夫すれば、

双方の負担や不安は少なくなる」と話す。 


 聴覚障害には個人差があり、コミュニケーションの手段も人によって

得意なものが異なる。生まれつき聴覚障害を持つ高齢者は手話で意思疎通を

図ってきた経験が長く、読み書きが苦手なことが多い。


 一方、中途失聴者や若い世代は筆談やメールが得意で、

手話が苦手だったり理解できなかったりする場合がある。


 原さんは「体調不良や動揺している時、手話や筆談、読唇など

慣れない手段でやり取りするのはお互いに難しい。

相手に合わせて方法を探る必要があると知っていれば、混乱は避けられるはず」と指摘する。 


 今月2日の手話講座には能美市消防本部の職員約30人が参加。

市内在住の聴覚障害の当事者が講師を務め、簡単な手話を伝授したほか、

不調の種類や痛みのある部位などをイラストで示した

「コミュニケーションボード」の導入を呼びかけた。


 受講した男性職員(58)は「以前、当事者が頭が痛くて目も開けられない

というケースがあり、家族に仲立ちを頼んだ。

今回学んだ手話などを生かして

緊急時のコミュニケーションを円滑にしたい」と話した。


119番、メールやファクスでも  

 毎日新聞は県内の11消防局・消防本部に聴覚障害者のための

サービスや工夫について尋ねた。


 通話に困難を抱えている人向けの「NET119緊急通報システム」を導入しているのは、

金沢市消防局

▽奥能登広域圏事務組合消防本部

▽七尾鹿島広域圏事務組合消防本部

--の3消防局・消防本部。

 

 同システムは事前登録が必要で、携帯電話などでインターネットに接続し、

文字のやり取りなどで通報する。


 かほく市、津幡町、内灘町の3消防本部管内の119番通報は

金沢市消防局が対応している。また、その他の消防本部は電話だけでなく、

メールやファクスを用いた通報システムも採っている。  


 一方、白山野々市広域消防本部は今年7月、管内の当事者団体から

コミュニケーションボードの寄贈を受け、救急車全8台に配備。

ボードの使い方や手話について11月に講習を実施する予定といい、

担当者は「すぐに効果が出ることから始めたい」としている。




YOMIURI ONLINE  2018年08月10日


石川 消防本部で手話講座…能美

 能美市消防本部で、手話講座が開催され、救急や火災の現場に

出動する消防士39人が手話を習った。


 同市は4月に市手話言語条例を施行しており、消防本部を手始めに、

病院を含めた市職員向けの入門講座を開き、現場で役立つ手話の普及に努める計画だ。

手話を練習する消防士たち(能美市寺井町の市防災センターで)


  能美市に住む聴覚障害者の新田照予てるよさん(41)が講師を担当。

新田さんは、救急車を一度呼んだ時に苦しくて目も開けられず、

筆談が難しかった経験があるという。


 参加者たちは、筆談などの聴覚障害者とのコミュニケーションの取り方のほか、

「痛いところは?」や「落ち着いてください」など現場で役立つ手話を教わった。


  同本部の井上信夫・庶務課長は「駆けつけた隊員が、手話を分かれば安心感も出る。

この機会に知識を養いたい」と話した。


 同市によると、市内の聴覚障害者は122人(4月現在)で、

手話を日常で使っている人は約30人いるという。


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