GIGAZINE 2018年07月17日
人工内耳は音を電気信号に変換することで
脳に音を届ける技術です。
しかし、雑音の多い環境で人と会話するのは難しく
まだまだ技術的な課題が多いとされています。
そんな中、ゲッティンゲン大学病院のマーカス・イェシュケ氏らの
研究チームは既存の人工内耳デバイスの課題を解決するため
光を使った人工内耳技術を開発しました。
By Biophotonics.World
この光を使った人工内耳に関する研究は過去にも行われており
これまでの研究ではマウスやラットが使用されていました。
しかし、イェシュケ氏らの研究では、より人間の内耳に近いスナネズミを用いて
技術が実証されたことで、今後人間の内耳にも適用できる可能性が広がっており
大きく注目されています 。
イェシュケ氏らの研究チームは光で動作する人工内耳を実験するため
アラーム音を聞く度に障害物を飛び越える訓練を施したスナネズミを用意しました。
そして、このスナネズミの内耳に光に反応するウイルスを注入した研究チームは
内耳に光を照射するための光ファイバーも埋め込んでいます。
By Groman123
研究チームがこの光ファイバーを使って青い光をスナネズミの内耳に当てると
スナネズミはアラーム音を聞いていないにもかかわらず
障害物を飛び越える動作を行ったそうです。
このスナネズミの行動から、光に反応するウイルスを使用した
人工内耳が機能することが明らかとなりました。
By Wikipedia
イエシュケ氏は「聴力を失うことは、多くの人がこれから経験するとても大きな問題です」
と語り、人々の多くは年齢とともに徐々に聴力が低下すると指摘しています。
また、同氏は「最悪の場合、補聴器や人工内耳に頼る人も出てくる」として
今後この技術が大きく注目されることになるとしています。
人工内耳に光を利用することの利点について、イェシュケ氏は
「光はより多くの周波数に分解できることから、多種多様な音を聞き分けることが
理論上可能です。このため、光を使った人工内耳は将来的に雑音の多い環境での
会話だけでなく、音楽鑑賞もできるようになります」と述べています。
研究チームによると光を使った人工内耳は「研究の初期段階」にあり
実際に臨床試験を行うためには解決しなければならない問題が山積しているようです。
そこで、イェシュケ氏らは「光の刺激が聴覚系にどのように作用するか」
「げっ歯類と人の聴覚刺激のメカニズムがどのように異なるか」
を今後調査するとしています
0コメント