2018年07月19日 YOMIURI ONLINE 読売新聞
「共助」の力、災害時こそ 大阪北部地震1か月
◇慣れぬ作業「つながり」が救う
府北部を最大震度6弱の揺れが襲った地震は18日、発生から1か月を迎えた。
北摂地域の被災地では、地震直後から民間団体や自治会が被災者支援に走った。
自治体が混乱するなか、近年、重要性が指摘される、地域が支え合う
「共助」の力が発揮されていた。(畑本明義、小坂田基)
■見えた情報格差
一般社団法人「タウンスペースWAKWAK(わくわく)」は
高槻市西部の富田地区で独居高齢者や障害者、子育て家庭の支援に取り組む民間団体だ。
地震発生翌日の6月19日、支援物資として届いた食料や水を
これまで支援してきた150世帯に配りながら、安否確認を進めた。
こうした活動で見えてきたのが「情報格差」だった。
特に、高齢世帯では「防災無線が聞こえなかった」「インターネットが使えないから
役所が出す情報が手に入らない」といった、困惑の声が聞かれた。
ガスが復旧したことを知らず、復旧してもどうすれば使えるようになるのか
わからない世帯もあり、ボランティアの人たちが開栓の操作を手伝った。
地震の翌日に食料や水を配りながら被災者の安否を確認するボランティアら(高槻市で)
=WAKWAK提供
聴覚障害者の夫婦は、市の緊急放送が聞こえない不安を抱え、近所の親族宅に身を寄せていた。
雨漏りするアパートから避難できずにいた独り暮らしの高齢女性も見つかり
民生児童委員が避難所に案内した。
災害が起きれば、ふだん接することのない罹災りさい証明の
申請やボランティアの依頼、応急危険度判定結果の理解など、慣れない作業に直面する。
代表理事の岡本茂さん(68)は「被災後、地域住民がほんとうに
困っていることは何なのかは、日頃から時間をかけて
関係を築いていないと気づきにくい」と話す。
■自治会が被害把握
高槻市南部、唐崎自治会の籠野寛会長(67)は、激しい揺れに襲われた時
地域の資源ゴミ回収の準備をしていた。
「ドーン」という衝撃を感じ、近くの家で屋根瓦がずれていくのが見えた。
自宅にノートとペンを取りに戻って地域を回り、午前中に約100棟で
屋根瓦がずれているのを確認した。
午後からは、自治会が持つスピーカー付きトラックで
「ブルーシートを配布します」と報じて回り、屋内の片づけをして
生活空間を確保するよう呼びかけた。
ブルーシートや土のうは自治会が代表して受け取り、災害ゴミも地区内で集積し
まとめて回収できるよう段取りをした。
屋根にブルーシートを張るボランティアも独自に確保し
毎日トラックでこうした情報を伝えて回った。
6月中に約600世帯のうち130世帯でブルーシートを張り終え
家屋内の整理は自治会役員やボランティアが手伝った。
地区住民の多くが70歳以上。
籠野さんは「自治会が動けば、すぐに話もできる。
こんな時に助け合うためにこそ自治会がある。
今回、少しは組織が存在する意味を示せたと思う」と話す。
■新たに見守り登録
豊中市社会福祉協議会(市社協)は地震後、民生委員と連携して
見守りの対象になる高齢者を増やす取り組みを進めている。
市には、独り暮らしの65歳以上が希望すれば、民生委員が定期的に
訪問して生活の相談にのる制度があり、約6000人が登録済みだ。
取り組みでは、未登録の世帯を民生委員が個別に訪問し、家具の転倒を防ぐ
「突っ張り棒」を無償提供して設置するとともに、制度への登録を勧める。
これまでに、新たに約100人が加入したという。
地震の前は「個人情報が知られる」と敬遠した人でも
「安心できる」と受け入れる例が多いという。
市内で独り暮らしする高齢者の総数は約3万4000人で
見守りが必要な人は相当数いる。
市社協の勝部麗子福祉推進室長は「
新たなつながりを作り、次の災害に備えたい」と話す。
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