毎日新聞 2018年6月26日
「働く人もお客さんも笑顔に」聴覚障害者ら運営
耳が不自由なスタッフらが手話や筆談で接客する手話カフェ「nico」が
福岡市博多区千代にある。
「聴覚障害者にも健常者と同じ仕事を」との思いから
2月にオープンして4カ月あまり。
店名の「nico」には「働く人もお客さんも笑顔になれる場所」
との願いが込められている。
店内は1、2階の約40席。店に入ると、注文はカウンターにある
イラスト付きのメニュー表を指さして伝える。
「指さしてね」と書かれたパネルや筆談用のホワイトボードが置かれ
着席後に要望がある時には手を挙げてホワイトボードで筆談をする。
手話を使えれば手話で注文やスタッフとの会話ができる。
注文カウンターで笑顔を見せるスタッフの宮崎さん=福岡市博多区で、末永麻裕撮影
運営するのは、福岡市で障害者福祉サービス事業所を展開する
一般社団法人ノーマライゼーション。
代表理事の松本昌彦さん(60)は長年聴覚障害者の働きぶりを見てきた経験から
「第一言語が手話で、(健常者と)言葉が違うだけ」と感じていた。
新たな就労場所をつくれないか模索していた時、テレビで東京の
手話カフェを知って開業を決意。昨年5月から市主催の手話教室に通い始めた。
その教室で同じ生徒として出会ったのが現在店長を務める
本野(もとの)有華さん(28)。
前職のホテルのフロント業務で聴覚障害者の宿泊者とコミュニケーションが
取れなかったことから手話を習い始めた本野さんは
松本さんがカフェ店長を探していると知り
「手話を生かせるなら」と経験のない飲食業に飛び込んだ。
スタッフは7人で、うち5人が聴覚障害者。
賃金や勤務時間は健常者と変わらず
松本さんは「カフェの仕事に聴覚障害者も健常者もない。
手話や自分の能力に自信を持ち、接客業でも
働けるんだと希望が持てるような店にしたい」と話す。
スタッフで聴覚障害がある宮崎柚希さん(21)は、接客の仕事を希望して
何度も採用されず、心が折れかかっていた時に募集を見つけた。
「接客は難しいこともあるけれど、お客さんに『ありがとう』
『また来るね』と笑って言われることがうれしい」
と店名のような満面の笑みを見せた。
【末永麻裕】
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