毎日新聞
2019年3月8日
放課後等デイサービス(放課後デイ)事業が2012年からスタートし、
障害のある子どもたちの「学童保育」として期待されてきた。
放課後デイの数は12年度には2887カ所だったが、
18年4月時点では1万カ所以上と約4倍に増えてきた。
そのような中、18年4月に厚生労働省が事業報酬の改定をした。
この基本報酬の引き下げにより重度の利用者が多い
「区分1」で3%から4%、
軽度の利用者の「区分2」では10%から12%
の減額となっている。
我が国は、NHKが「発達障がいの問題」を取り上げているように、
産業社会の高度化等によって「発達障がいが目立つ社会」となった。
この発達障がい児・者についてWHO(世界保健機関)がICD(国際疾病分類)
10指針(ICD11に改定予定)を公表している。
この指針によると日本でも多くの対象者があることが推測できる。
これまで、第1次産業や単純労働の場で受け入れられ、
発達障がい自体が目立たなかったといえる。
特に、境界線の対象者は、一般の学校で普通に教育を受けてきたし、
得意な才能を有する方は有名大学にも入学できてきた。
しかし、社会参加に失敗を重ねると“引きこもり”となり
社会的な課題となっている。
この発達障がいの問題に対応できる放課後デイ事業は、
早期発見・早期治療のためにも地域学習の場としての期待がある。
特に、学校休業日の期間では果たす役割が大きい。
法律の上では、発達障害者支援法が18年に改正されているが実効性に課題があるようだ。
放課後デイ事業は多くの期待があるが、一部の事業者は、
設置要件等が簡易であるために安易に参画して、テレビを見せるだけ
という場があり非専門性な対応で危惧される。
また、ホームページ等でも安直に参入できることをうたい、
設立支援をする企業もある。
そのために、厚労省による前記の事業報酬の改定となった経緯がある。
なお、18年2月の学校教育法の改正により、
盲学校、ろう学校、養護学校を
まとめて特別支援学校となり寄宿舎が付属している。
もちろん、学校には送迎車があるが、地方の学校では
通学手段が確保できないために寄宿舎が利用されてきた。
青森県八戸市の社会福祉法人サポートセンター虹(湖東正美理事長)は、
4カ所の放課後デイ事業をさまざまな年齢の
友人と関わる場所として運営してきた。
職員は、日々の自宅と特別支援学校への送迎や
学校休業日の受け入れ等の対応している。
写真はその事業所の一つである。
青森県南部町の「放課後デイあさひ」の職員と利用者
しかし、事業報酬の改定や職員の不足によって昨年12月に1カ所を休園した。
特に、発達障がいの課題は、我が国では対応が明確化しているとは言い難い。
家庭、学校以外の集団生活の場所として
「放課後デイあさひ」のような場が必要だ。
なお、一般児を対象とした学童保育事業では、子どもたちの生活の
質を確保するために作られた全国統一の指導員資格・配置の最低基準
(「従うべき基準」)が事実上撤廃されようとしていて危惧される。
(NPO法人地域福祉研究室pipi理事長 渡邉洋一)
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